GEISAI OFFICIAL WEBSITE > GEISAI #11 受賞者発表
泰:先週末に行われたGEISAIの審査がちょっと素敵だったぽい。リンク先の受賞者一覧を見たら銀賞の作品が目につくことでしょう。「搬入失敗しました」と書かれた紙がディレクターズチェアに貼られただけの作品。おい、これが1200ものアーティストの中の銀賞か。アートのコアなファンでもこれに銀賞あげるなんて、審査員の力が強すぎなんじゃないかと思ってしまう。実際、どんなアート審査でも「オレこんなのに賞あげちゃったよ」みたいな審査をする人がいるもんだけど、実力の伴わないアーティストに賞を与えることは、結局ただのアーティスト潰しにしかならなくて才能を発掘しないといけないこういう場面では我が出過ぎなKY審査と見られるものだ。
でも、今回はどうやら違うらしい。関係者や友人を通じて聞いた非公式な話なのであくまでオフレコ話として読んでいただきたいのだが、実はこの作品、本当はホームレスを座らせて隣に作者が正装した状態で立つというパフォーマンス作品だったらしい。しかしそれがチェアマンの村上隆の逆鱗に触れ、悶着の末、開場後たった10分で強制撤去となったそうな。その騒動を審査員のアリソン・ジンジェラスが見ていて、その後の内情はわからんけど結果的に銀賞に繋がったと。
作者もさることながら、村上とアリソンは良くわかってるなという印象を受けた。もしこれが強制撤去にならなかったらここまで面白くならなかっただろう。村上はアーティストだから本来はこういったゲリラ的なパフォーマンスは受け入れるタイプだろうけど、ここで正義を精一杯演じないと このパフォーマンスが死ぬ事をわかっていたのだろう(実際、過去に小田マサノリ氏が受賞拒否した際にスルーをしたスタッフに対し咎めていたのを見た事があるし)。また、そのたったの10分の出来事をきっちり拾うアリソン・ジンジェラスって人もすごいなと思った。拾って初めて成立するたぐいの作品には審査員のセンスの良さがモノを言う。
マウリツィオ・カテランという世界的なアーティストがいる。ある日、彼がどこかの大学で講演をした時のこと。カテランは自身の作品の紹介を中心に講演を行って、最後には学生の質問に熱心に答えたと言う。普通の講演といえば講演なのだが、唯一違ったのは、講演をしたのがカテラン本人ではなくアカの他人だったというところ。カテランは講演に全然違う人を出演させ、学生はその役者(?)をカテランだと思い込み質疑応答までしたのだ。講演後に事実を知った学生が学んだことは大きかっただろう。
リーダーシップがとれない政治家が取りざたされるけど、美術業界のお偉いさん達も同じくらいリーダーシップがとれないのよね。誰にも文句を言われない審査をする。その結果、誰にも文句を言われない作品がボコボコ生まれるだけ。unit. maker氏のようなハイリスクな作品をリスクごと受け止めて評価しない限りはそうそうブレークスルーなんて起き得ない。普通に絵を描くにしても見るにしても、カテランやアリソンのような姿勢、村上のようなサポートは重要なんだろう。前回のGEISAIミュージアム2は日本の美術館関係者が中心になった審査で、受賞作品が保守的な美術大学の選抜試験と見間違えるような内容で、ちょっと色々失望してただけに今回のこの話で嬉しくなった。今回の騒動を美術関係者がどう捉えているかが見物っす。
